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月夜の迷子たち
第10章 抗う心
仮面舞踏会から一ヶ月もしないうちに、レイアは和子のテニス仲間が集まる中園家のアフタヌーンティーの会に顔を出すようになっていた。

レイアは幼い頃から、大勢でわいわい過ごすことが好きだった。

お祭りや学園祭といったような催しは大好きだったし、サッカーやテニスを観戦して仲間と盛り上がるのも大好きだった。

和子の通うセレブ御用達のテニスクラブで受付をしているレイアは、バイト初日に和子に気に入られた。半年ほどはクラブで話をするだけだったが、受付のバイトの後に和子がショッピングや食事に連れていってくれるようになってから急速に距離が縮まった。

レイアを連れていくと和子は皆から注目されることが嬉しいようで、レイアもまた賑やかな雰囲気が好きだったから、進んで参加した。

そして、和子が知っている中でも一番豪華で一番盛り上がるというパーティだというのが鴻池邸の仮面舞踏会だった。

マリーアントワネットのような衣装に仮面をつけ、普段味わうことのない雰囲気にレイアはワクワクしていた。絢爛豪華な会場に、色鮮やかな花々、光り輝く料理。

まずは満足するまで食事を楽しんだ。コルセットが忌々しいが、それでも食べた。

レイアの食事が終わるのを待っていた男性たちが待ちきれずに次々と押し寄せる。

盆踊りしか踊ったことがないが、小さい頃からお祭りが大好きだったから、踊れないながらも適当に踊って楽しんだ。
案の定あらゆる男の足を何度も踏んだ。申し訳ないと思いながらも面白かった。

18世紀のヨーロッパに生まれていたら、自分は案外楽しめたかもしれないと内心微笑んでいた。
皆が笑い、飲み、踊り、おやべりする。華やかで騒々しい。
いつも一人部屋で静かに過ごす夜との違いにレイアは心躍った。

そんなときに現れた無愛想な男・・・・・・。

レイアから見た俊は、皆が楽しむ中、唯一つまらなそうに存在していた男。

それでも誰も言わなかったことをはっきりと言ってくれて、ダンスも丁寧に教えてくれた。厳しそうに見えて、案外優しいのかもしれない。

その時はまだ、レイアにとって俊は、その他大勢の中の一人に過ぎなかった。

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