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第3章 閉じられた扉

「・・・・・わかりました。安心しました。これで・・・・・集中して仕事が出来ます。あの・・・・少し作業が遅れているので、ペースを上げようと思います。しばらく集中して進めたいので、アトリエに来るのは遠慮してもらうよう、祐哉さんに伝えてもらえますか？」
「了解しました」

紗奈はよろしくお願いしますと、頭を下げて俊の前から逃げ出すように去った。

俊の言葉が胸に針のように突き刺さっていた。

でも・・・・おかげで目が覚めた。
祐哉に好意を示されて、浮かれていた自分がいたのは確かだった。


自分の与えられた使命を思い出す。
自分がやるべきことは、絵を描くだけ・・・・。

駆け込むようにしてアトリエに入った。息を切らしてキャンバスを見つめる。
肖像画の祐哉は優しい眼差しでこちらを見ていた。

泣いてしまいそうだった。

しかし、一度泣いてしまったら全てが崩れてしまう気がして、紗奈は懸命に堪えた。
慌てて筆を取る。

（私には絵がある・・・・私には絵が・・・・・）

心の中で強く唱える。自分には絵がある。それだけで生きてこれた。これからもそうだ。
誰かを愛する必要など、ない。