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私の欠けているところ
第2章 『はじまり』に変わったのは


ふと
深海さんに視線を合わせると
深海さんは
何か考えごとをしてるみたいだった

彼氏のことを
考えてるのかもしれない

そんな一方的な想像をするだけで
俺はモヤモヤした


『じゃあLINEや電話は大丈夫ですね。
俺と深海さんが
偶然2人でぶらぶら歩くのもあり。
仕事の相談したい時は
一緒に食事もあり。

ですよね?』


少々強引だとは思ったけど
俺はもう
モヤモヤしたまま
指をくわえてるのは
耐えられなかったんだ


LINEが既読になり
深海さんを見ると
深海さんは俺をチラ見してから
髪を耳にかけて
唇にぎゅっと力を入れた


悩んでるんだろう


「いけないこと」を
しそうになってると思ってるのかもしれない


俺はその
「いけないこと」を望んでいるんだけど


そして
しばらく考え込んだあと
深海さんからLINEが届いた


『そうだね』


よし!
思わず声を上げそうになるのを
必死で堪え
俺は深海さんに笑ってみせた


逆を言えば
俺に対して
深海さんは恋愛感情が無い
ってことなんだけど


『じゃあ
偶然この店で会って
仕事の話をしたくなったから
合席するのもOKですよね?
今から合席しませんか?』




既読がつくと同時に
深海さんは
「えっ…」って顔で
俺と目を合わせた



俺は
ジェスチャーで
こっちに来る?
それとも
そっちに行こうか?
と伝えると

深海さんは戸惑った様子で
携帯に視線を落とした




けど
LINEはなかなか来ない



しびれを切らせた俺は
また攻めのLINEを送った


『ここで合席がダメなら
あまり人目につかない店で
偶然会ったってテイがいいですか?』


いつの間にか
ここか他の店
どちらかを答えなければならない
質問にすり替わっていた


そして
やっと出した深海さんの答えは

『他のお店がいいかな。
会社も近いし』

だった


そう

この言葉からはじまったんだ

LINEのやりとりも

2人で会うのも

…深夜の電話も…秘密も

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