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私の欠けているところ
第5章 その『嘘』に俺は追い詰められ

その言葉に
深海さんからの返事はなかった

けど俺は
ゆっくりと深海さんに身体を寄せ
そして深海さんの頭を
優しく引き寄せたんだ

さっきよりも
しっかりと抱きしめた
深海さんの頬は
もう俺の胸の中で

深海さんの手は
しっかりと俺のシャツを
握りしめていた


深海さんの悲しい話で
俺の胸はぎゅうっと
締め付けられていたけど
そのまま髪にキスしたいほど
俺の胸は熱くなっていた


言いたいことは
山ほどある

どうしてそんな男と
付き合ってんだよ

アイツの
どこがいいんだよ

どうして
泣いてしまった意味が
分からないんだよ


けどそれは全部
深海さんを問いただし
追い詰めるように思えた俺は
その言葉を口にすることはなかった



「時ちゃん…」



「……」



「泣いた理由

ほんとにわからないの?」



「…ん…」



「そっか…

今、理由分からなくてもいいけどさ
この先
泣きたくなったら
俺、いつでもこうするから」




「…無理しないで」




「したいからしてる」




「気持ち悪く…ない?

私、女だけど」



「クスッ(笑)」



「え?」



深海さんが
俺の顔を見上げて
視線を合わせた



「俺、時ちゃん好きだから。

それに
時ちゃんだって
女友達にハグすることあるだろ?」



「あ…うん」



「時ちゃんこそ
気持ち悪くない?」



「ううん


落ち着く」





「……俺も」



俺が
女を愛せないと
思われてるから

俺は
時ちゃんを
『好きだ』と簡単に言える

本当に好きだから
惜しみなく言える



好きだ


大好き


俺を見上げた
時ちゃんに

このまま
キスしたいくらい

好き



「だから

遠慮すんなよな」

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