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第5章 部外者…



篠原さんが向かう先の扉の前に会長さんが厳しい顔をして立っている。

涼ちゃんの控え室。

地方巡業の時とは違い、今は個室を使える。


「理梨ちゃんを連れて来ましたから…。」


篠原さんが会長さんに説明をする。


「今は15分だけしかないけど、とにかく涼二を落ち着かせてくれ。」


会長さんが私に言う。

犬の飼い主の気分になる。

控え室の扉を会長さんが開けてくれる。

中にはロッカーや長い机、ベンチが置いてある。

壁際のベンチに涼ちゃんが頭からタオルを被って座っている。

まるで試合が終わったような姿。

髪が汗で濡れている。

最悪だと思う。

水分補給はもう試合が終わるまで出来ない。

ベンチに座る涼ちゃんの隣りに座る。


「何やってんのよ。」


私の声に涼ちゃんがゆっくりと顔を上げる。

篠原さんは興奮状態だと言っていたけれど涼ちゃんは私を見てふふふと穏やかに笑う。


「笑ってる場合じゃないでしょ?」


不安を涼ちゃんにぶつける。

涼ちゃんがバンテージを巻いた両手で私の両手を握ると両手を揃えるようにして私の手に口付けをする。


「涼ちゃん?」

「理梨を愛してる…。」


一瞬、時間が止まったように感じた。


「もっかい…、涼ちゃん?」

「理梨を愛してる…。チャンピオンになるまでカッコ悪いから言うのを我慢してたけど…、俺には無理みたいだから…、今言うよ。」


涼ちゃんが私の顔を撫でて来る。


「幸村 理梨さん、チャンピオンになったら俺と結婚して下さい。」


完全に時間が止まった。

涼ちゃんからの2度目のプロポーズ。

もう子供の時のお遊びじゃない。


「負けたら…、許さないから…。」


目頭が熱くて水が頬を流れ落ちた。


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