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姫巫女さまの夜伽噺
第7章 癇癪鼠
それ以来、志摩はできる限り伊良のそばにいて
狂おしいほどの愛情で彼女を抱いた。


その、今までし続けた懺悔の気持ちを形にするかのように
心も体も、深く愛して彼女を常に満たすほどだった。


志摩の包み込まれる切ない愛情に
伊良は声さえ出せないほどがんじがらめにされて
幾度となく褥の中で果てては
志摩を切なく愛しくさせた。


志摩は時間を見つけては伊良を見にきて
情事の手順や作法にも似た事を教えた。
さらに、人と神との感覚の違いも、分かる範囲で教える努力をしていた。


その中で、深く印象的だったのは
神にとって、体を交えることが神事だという事だった。


それを口を酸っぱくして伝えるのは
伊良がこれによって苦しまない様にするためと
二度と麻木と同じ運命を辿らせたく無いという
志摩の強い思いが伝わっていて
伊良は志摩の気持ちをしっかりと受け止めた。


此方の世界での常識や
どういう神がいるのかなど
伊良は知らない事を知る事も楽しく
志摩の重たい愛情を精一杯受け取る事も愛しく思えた。


穂高から、客前に出るようにと言われたのは
穂高と志摩が言い争いをしてから
ずいぶんと経ってからだった。


双子の童子に着飾らされて
伊良が宿を練り歩く事が知らされ
早急に準備が進められる。


「こんな、たくさん着物きるの?」


「それはそうですよ!大勢のお客さまが、伊良様を待ち望んでいますよ!」


近江も美濃も
とてもうれしそうにはしゃぎながら


仕事はてきぱきとこなした。
伊良を飾り付けて、髪の毛に香油を塗って
全身をきれいにして、駕籠に乗せた。
夕方になって、宿が忙しくなるころにはすっかり支度は整い
紅をさして色っぽくなった伊良は
駕籠に乗せられて宿の大広間の回廊へと連れられた。


「お披露目って…私、どうしていればいいの?」


「怖がんなよ。お前はおとなしく下でも向いてりゃいい」


不安そうな伊良に応えたのは
いつの間にやらそこに立っていた志摩だった。


「志摩!」


「横にいるから、じっとしておけよ」


志摩はにやりと不敵に微笑む。
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