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姫巫女さまの夜伽噺
第8章 老舗蛞蝓
初めて宿でお客を取ってから
丸二日経ってから
次のお客との日が来た。


やはり言われたのは唐突で
それまで伊良は部屋でゆっくり待機していた。


双子が遊びにくると
彼らとおしゃべりをしたり
破けている着物を縫う手伝いをした。


伊良が裁縫が得意だったため
翌日にはほつれた着物をわんさか持って二人が現れた時には
伊良は大きく笑ってしまった。


部屋の外から出る事はまだ許されていない様で
そこで裁縫をしながら双子に尋ねると
屋敷の中を歩く許可は
穂高に貰えばいいと二人して頷いていた。



(じゃあ、次会った時にお願いしてみようかな…)



さすがにこの部屋にこもりっぱなしで
庭と湯殿としか行ってないので
少々退屈してきていた。


宿の全貌も見てみたいし
働いている人達も見てみたかった。


そんなこんなで夕方前になると
双子はきゃあきゃあ騒ぎながら
宿の準備へと取り掛かるために出て行く。


二人を見送って、仕上がった着物を畳んでいると
そのうちにドカドカと志摩がやって来て
準備するぞという一声と共に
式達に取り囲まれて湯殿へと連行された。


「ねぇ、志摩、もう少し早めに言ったりしてくれないの?
その…やっぱり心の準備が…」


「言ったところで変わらんだろう。
相手を知れば楽になるとでも思うか?」


それにはまともに返事ができず
湯殿で綺麗に体を洗われて
隅々まで入念に志摩にチェックされる。
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