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姫巫女さまの夜伽噺
第4章 調教ー志摩ー
穂高に初めてを奪われ
しばらく下腹部の痛みにムカムカしていたのだが
数日経つとそれもだいぶ緩和した。


寝て起きてご飯を食べて
ぼうっと外を見て過ごす。
たまに携帯電話の電源を入れてみるが
相変わらず圏外のままだった。


世話役を任されている双子はよく喋り、よく動く。
愛蘭ーーー伊良の口に合う食べ物を探して
ちょこちょことまめに世話をしてくれた。


さすがに神様や妖が集う温泉宿であるだけあって
食べ物はとても美味しく感じた。


それが、人間としての体から離れてしまったためなのか
それとも人間にも美味しいのかは
伊良にはよく分からなかった。


重湯やお粥が食べられるようになり
その後、猛烈な食欲と眠気を繰り返した。


傷に苛まれた体は栄養を欲しているようで
肉類(なんの肉かは伊良はあえて聞かなかった)や
薬草はおかわりしてでも食べた。


そうしてさらに数日が過ぎ
志摩が顔を出したのは
とある日の空が明るみ始めた頃だった。


この宿では
空が暗くなり始めてからが勝負のようだった。
伊良の世話を任されている双子も
たまに1人欠けていたり
かと思えば仕事終わりに
顔を上気させながら走って来て
伊良の様子を見に来る事もあった。


「…起きてるか?」


志摩の声に
明るみ始めた空をぼうっと見ていた伊良は振り返った。


初めて会った時と変わらず
浅葱色の狩衣に獣耳。
少しばかり怒ったような表情は
彼の普段の顔つきなのだろう。


「うん、起きてる。今仕事終わったの?」


ああ、と頷いて志摩は部屋に入り込むと
持っていた瓢箪徳利から酒をゴクリと飲み
縁側で立っていた伊良の横へと来た。


「飲むか?」


「いいや。
…あんまりお酒って得意じゃないし…傷も治してもらったばかりだから」


やっと良くなってきたのに
そんなものを飲んで悪くしたら大変だと思った。
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