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第12章 手紙

ヤエ子が家にやって来た、詩織が居なくても直樹には疎ましい

「これ読んでおくと良いよ あんたの為だから」

そう言うとヤエ子は家を出た、置いてあるのは封筒だけ

封筒を開けると、知り合いだった産婆のヨネの筆跡で何やら書いてある

詩織はあの惣菜屋の実子ではなくて養女、私が取り上げた女の娘で、妊娠時から精神が不安定の為に養育出来ないと判断

母親の名前は夏希、父親は不明

他にも細々と書いてあったが直樹の手が震え出す、読み終えたら更に手の震えは酷くなっていた

顔を洗い、水を飲んで呼吸を整えた

私が愛した女だった夏希の娘が詩織？

幼い時から、夏希を知る人間たちは詩織を似てると言っていた

直樹も似てると思った

特にヤエ子は夏希との話を知ってる分だけ、ずっと言い続けていた

直樹は手紙を持ち、ヤエ子の家に怒鳴り込みに行く、するとヤエ子は出掛けるらしく着替えをしていた

「これは何なんだ？ 本当の話なのか？」

「詩織の母親に渡されたんだよ、美織が生まれた時に‥ 世間ではあんたらは夫婦だけど、ひょっとしたら父と娘なんだから」

「嘘だ、詩織は夏希の娘‥俺たちの娘じゃない」

「そんなことどうだろうね‥ さーて、あんたが落選したから尻拭いに行くよ 借金の穴埋めに」

完全にヤエ子は妻の座、女将の座として、直樹の為‥ 酒蔵の為に奮闘している