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牝獣の哭く夜
第11章 夜景レストラン
 レストランを出ると、二人は青山通りを少し歩いた。
 酔った頬に夜風が心地よい。

 通り沿いのビルの灯りと、次つぎと走り去る車のヘッドライトが混じり合い、都会の夜をさまざまに彩って美しかった。

 歩きながら、お互いに好きな映画の題名を上げて笑い合う。

 並んで歩くと、女としては長身の美貴より、諏訪は頭半分ほど背が高い。
 もしも肩を抱かれたら、その腕にすがって、逞しい肩に頭を預ける誘惑に勝てなかったかもしれない。

(……深い仲になっちゃ、いけないのよ)

 そう自分に言い聞かせる声は、あまりにも儚《はかな》かった。

「この近くのショットバーです。
 あまり知られてないけど、素敵なカクテルが飲めますよ」

 西麻布の方に歩いてゆく。
 マンションやオフィスが多く、人通りが少なくなった。

「ほら、そこの角を曲がったところです」

 諏訪が美貴の腰に軽く手を当てて、通りの先を指差す。
 後ろに人の気配を感じた。

「おい、何をする!」

 美貴は驚いて振り向こうとした。

 首筋に激しいショックを受けた。
 悲鳴の形に口を開けたまま声も上げられず、地面が急速に近づいてきた。


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