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牝獣の哭く夜
第26章 エピローグ/ふたたび
 その後、美貴は沼田と一度も顔を合わせていない。
 どこでのたれ死んでいるかも知らない。
 知りたいとも思わなかった。

 これから先、愛する男が現れるかもしれない。
 共に人生を歩んで行きたくなるような人に巡り会えるかもしれない。

 でも――と思うのだ。

 本当に生きるのが苦しくなったとき、死にたいほどつらくなったとき、自分は想い出すのではないかと。
 心の奥に封じ込めた感情が噴き出すのではないかと。

 その時、ふたたびあの男が現れて、この身を死ぬほど辱めてくれるだろう。
 どんな皺くちゃの老婆になっていても、変わらぬ淫蕩な眼差しで見つめてくれるだろう。



 ――それまでは、生きてゆける。


                    (完)
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