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滲む墨痕
第3章 雪泥鴻爪
潤は、そのとき初めて自らの意思で藤田の身体に触れた。セーター越しに厚い胸板を押し返し、びくともしないことがわかると、その太い首に腕を回してすがりつき困惑の意志を示す。
「待っ、ん……せんせっ……」
そのとき、潤の小さな口内に男の舌が差し込まれた。強引に誘い出された薄い舌は、分厚いざらりとした舌腹とこすれ合い、びちゃりと絡み合う。
「は、あぁ……」
先生と呼んだことを咎めるような濃厚なそれは、全身から一切の力を奪い取り、かろうじて頭に残っていた抵抗心を溶かしてしまう。互いの唾液にまみれた唇がようやくわずかに離されたとき、潤が薄くまぶたをひらくと、同じく惚けた表情の藤田と視線が絡んだ。