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滲む墨痕
第3章 雪泥鴻爪

「あっ、あぁ……」
「潤さん……潤……」
「……っ」

 一瞬、色気のある低音に呼び捨てにされて意識が飛びそうになった。ぼんやりとした視界の中、耳を離れた肉厚の舌が目の前に迫る。誘われているのだと知った潤は、たくましい肩にしがみつきながら自ら舌を絡ませた。薄目で見つめ合いながら交互に吸いつき、粘液を交換する。
 男の指が、濡れたショーツの陰裂をなぞり、奥で秘唇をひらく蜜口を押し込んだ。

「あんっ……」

 反射的に腰を引いたが、硬い腕に固定されてぐいと引き寄せられた。ショーツのぬめりを確かめるように、藤田は指を前後に揺らす。

「ああ……こんなに染みている」

 かすかに触れたままの唇が撫でるように動き、淫猥な言葉を口内に吐き出した。
 その有り様をまざまざと思い知らされ、潤は思わず唇を離し首を左右に振った。しかし、欲情した雄の眼差しが容赦なく詰め寄る。

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