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滲む墨痕
第3章 雪泥鴻爪

 腹の底に打ち寄せる波が弾け、脳内でしぶきを上げる。

「あっ、だめっ」

 うねる腰を大きな手に固定され、極限へ向かい駆け上がっていく意識の中、しつこいほどの濃密な舌遣いに急きたてられ、奥がひときわ激しく収縮した。

「ああっ、んんん……っ」

 腰が大きく跳ねたあと、ふっと脱力する。じゅわりと広がる甘い倦怠感の中で胎内が音を立てずに脈打つのを感じながら、潤は酸素を求めて荒い呼吸を繰り返した。
 とろりと視線を下ろせば、顔を上げた藤田と目が合った。野生的な濃い眉の下にある鋭い雄の目が、差し迫った感情を伝えてくる。切ない空気の中で見つめ合いながら、彼が上体を起こして下着に手をかけたとき、部屋の隅から鈍い振動音が聞こえた。

「……っ」

 眉をひそめてさらに鋭くなった彼の視線は、潤の頭上を越え、ある一点で止まる。潤のバッグだ。その中で携帯電話が着信を知らせている。

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