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滲む墨痕
第4章 一日千秋

 潤は低く呻き、涙に覆われて歪む墨文字を目に焼きつけた。もう書けないかもしれないと思った。
 直後に聞こえたのは、かすかに紙の繊維が千切れる音。一瞬ののち、びりっ、と無情な音とともにそれは造作なく真っ二つにされた。心まで引き裂かれるようだった。
 誠二郎の手は止まらない。半分になったそれらを重ねてさらに破り、また破り、どんどん細かくしていく。その手からこぼれた紙片がはらはらと舞い落ち、墨で汚された肌をそっと隠した。

 すべてが終わると、誠二郎が深く息を吐き、身じろぎをした。
 ようやく体内から異物が抜かれ、閉塞感から解放される。潤は、すかさず下半身に力を入れた。体外に吐き出された淫液がぬるりと陰部を伝う。意味のないことだとわかっていた。だが、無意識に働いた妊娠を拒む意志がそうさせた。

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