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いつかの春に君と
第1章 桜のもとにて君と別れ
…にいちゃん…!にいちゃん…!たすけて…!

遠くで妹の泣き叫ぶ声が微かに聞こえる。
…なぜ泣いているんだ…。
また、シスター達に折檻されているのか…。

鬼塚は必死に起き上がろうとする。
…しかし、まるで鉛の鎖に繋がれているかのように身体が重く、びくともしない。

…小春…!…小春…!
待っていろ…今、助けるから…!

懸命に叫び、身体を攀じる。
…早く…早く助けに行かなくちゃ…小春…!

なぜ身体が動かないんだ…。
ちくしょう…ちくしょう…!
唸りながらもがく。
…早く…早く…!

…その時…。

…にいちゃん!
甲高い悲鳴と、中年男の高笑いが響き渡る。

…鬼塚の目の前には、血だらけでぐったりと意識を失う小さな妹…。
そして、傍らには黒い神父の制服を着た中年男が笑い続けていた。

…「馬鹿め。お前のようなちっぽけな餓鬼に何ができるというんだ」

頭が煮えたぎり…真っ白になるような例えようもない怒りと憎悪に満ち溢れる。
鬼塚は手にしたナイフを神父の胸に突き立てる。
…何度も、何度も…。

…「死ね!死ね!死ね!」

何度刺しても神父は高笑いをやめない。
…「ちくしょう…!ちくしょう…!クソ野郎…!死ね!死ね!」

狂ったようにナイフを振り回す。

…気がつくと、小春の姿が何処にもない。
辺りは暗闇だ。
鬼塚は叫ぶ。
…「小春!小春!どこに行ったんだ⁈小春!」

…小さな妹…。
血だらけだった…。
早く手当しないと…!
小春が死んでしまう!

…「小春!小春!小春!」

鬼塚は喉が張り裂けんばかりに、妹の名を呼び続けた。
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