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サイドストーリー9
第6章 蛍の想ひ人②
「だから!だから俺にしとけって前から言ってんだろ!」

涙が出てきた。
フラれてから、ずっと泣けなかった。
眠れなくて、辛くて、寂しくて、悲しくて。
それでも泣けなかった。

加賀くんが幸せになれるのなら、それでいいと思った。

「ほら!浴衣着ろ!」

祥一は、勝手知ったる私のタンスから浴衣を出した。

「俺のために着ろ!」

「・・・」

「んでお祭り行くぞ」

「・・・・うん」

「これからは俺にしとけ」

「・・・・」

「そこは、即答するところだろ!」

「あっはっはっは」
久しぶりに笑った。

うん。
すぐに加賀さんを忘れられる訳はない。
こんなに好きだったんだもん。
でも、きっと祥一はそれも分かってる。

でもゆっくり忘れて行こうと思う。

「忘れられるかな?」

ほんの少し気弱に言えば

「直子の事『吉村ちゃん』なんてふざけた呼び方するオトコなんか祭りから帰ってきたら忘れてるさ」

ニカッと笑った祥一は3つ下とは思えないオトコの顔をしていた。



END****

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