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サイドストーリー9
第3章 キミの体温 ボクの吐息
「お母さん!これでいい?」

私の25年前の浴衣を着て、のぞみがせわしなく鏡の前でクルクルする。

「新しいの買えばいいのに」
「これでいいの」

25年前に、新田くんのために買った浴衣だ。

「こんな柄、今はないし」

レトロなのが逆に娘に喜ばれる。

横浜の花火大会に、休日出勤だった山田君が急に都合がついたようで
昨日から大騒ぎだ。

「さぁ、行ってらっしゃい」

歩きにくいだろうと少し早めに娘を送り出して
リビングに戻れば25年前から大好きな人が、読んでもいない新聞を広げていて
「行ったのか」
なんて平静を装って私に聞いて来る。

「気になるなら自分で見ればいいじゃない」

山田君に不満はないくせに難癖をつけたがるのが父親の様で。
だから私もからかってみる。

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