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女鑑~おんなかがみ~
第16章 献身
「お前は,この駅で暴漢に襲われたという政治家に何か恨みがあるわけではないのだね」
「はい。まったく存じ上げない方です」
葵はそう答えながら,恐ろしさがひたひたと湧き上がってくるのを感じた。
*****************

タイガの紹介だと言って葵を買った客はもう十人以上になるが,最初からずっと目隠しをされたのはこの客だけである。
先に若槻からの手紙を受け取っていた。文字をずらした暗号文である。
「近日中に,絶対に顔を見せることのできない客が行く。
客が部屋に入るまでずっと壁に向って座っておきなさい。
その客はお前からこの書類を受け取ることになっているのでそれを渡し,引き換えにその客から可能な限り,今後の予定を聞き出してほしい。
難しいのは承知の上だ。」
情報が取れなかった場合,取れた場合の送り方もすべて指示がされていた。

…無理な注文だと思った。
顔も見せてくれないような客が娼妓の質問になど答えるはずがないだろうと思った。
けれど,何とか成功させたかった。
それまでにも別の客から家の間取りを聞き出したことがあった。

最初は,顔も知らぬ男に身体を開かれることへの恐怖や嫌悪がなかったわけではないが,暗闇の心細さの中で,身体に触れる肌の感触が頼りだった。次に何が行われるのかわからないなかで感覚は一層鋭くなり,真っ暗な深海の大きなうねりのなかではぐれまいとして,途中からは夢中で腕にしがみついていた。

「お前ばかりいい思いしやがって。どちらが客かわかったもんじゃない」
呆れた声で言われて,任務を忘れかけていたことに気づいた。
「ごめんなさい。目隠しをされるのは,初めてだったので…」
「……そうか。そんなに良いものか」
「どうしてお顔を拝見できないのですか。お客様のこと,大好きになりかけているのに」
「……なら,ますます顔を見せるわけにはいかないな。
顔を見られたとたんに,嫌われてしまったのでは悲しいからな。」
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