この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
女鑑~おんなかがみ~
第5章 悪意
ある日、操子は材木置き場の裏にある茂みの中を歩いていた。その近くに桃の木があったので枝を取って、ひな祭りの生け花にしようと思ったのだ。
しかし、桃の木も梅の木もすでに切り倒されているようだった。どうやら木材加工場を大きくするために裏山の木をかなり切り倒したらしい。

もうすぐ美しい花を咲かせるはずの木が、蕾をつけたままで切り倒されたことを思うと、操子は、可哀想だなと感傷的になった。美しい花も、お父さまが虎子を得るために虎のいる穴に放り込まれたのだろうかと考えると、またいつぞやの夢を思い出し、身体の奥のほうが熱くなった。

操子は気を取り直し、ほかに何か手頃な花はないだろうかと、うろうろと歩いた。そこに女の声が聞こえた。
「孝秀さまが好きです。どうか、一度でよいので私を抱いてください。今日一日だけでも私を、若旦那様のお妾さんにしてください」
お兄さまの名前が聞こえたので、あわてて耳を澄ました。
心臓が高鳴るのが自分でもわかった。

「僕も君のことが好きだ。・・・・・・だから、高等商業を卒業したら君を妻にする。反対されるかもしれないが、なんとか両親を説得するつもりだ。」
まぎれもない、お兄さまの声だった。

これが「自由恋愛」というものなのか。
恐ろしさを感じながらも、操子はお兄さまを探そうとして声がしたほうに向かった。
大きな木の陰で女の人が跪いている後姿が見えた。着物から考えて女中さんのようだった。その先には兄が、大木を背にして立っていた。
女の人の顔は兄の腰のところにあるように見えた。

「何をしているのだろう」
不思議に思ったとき、お兄さまの怒号が聞こえた。
「馬鹿野郎、君はなんとふしだらなふるまいをするのか。恥を知れ」
女の人の身体がよろめいて倒れた。
お兄さまはあの女の人を殴ったのだろうか。

操子は踵を返して、家に戻った。しばらくは身体の震えが止まらなかった。
/185ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ