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女鑑~おんなかがみ~
第8章 平穏
夕顔は、むらさき屋で初めての夏を迎えていた。
当初、特に初めての客を迎えた日は誰もが心配したが、わずか二カ月のうちに、周りの者も驚くほど、ここでの生活を受入れるようになっていた。

夕顔は、倉持の大旦那によって無理やりに身体を開かれたのち、まだ傷も十分に癒えぬうちに、二人目の客を迎えた。女将はもう数日休んでもよいと言ったが、夕顔は自分のほうから次の客を取りたいと言い出し、周囲は却って心配したほどであった。それでも、女将はいつものように、二人目や三人目の客に対しては初物であると偽るように命じた。このような廓では水揚げを数回にわたって行うのは普通のことである。

二人目となったのは、丸福という老舗の和菓子店の経営を息子に任せたご隠居であり、還暦を過ぎているとのことであった。大昔からの馴染み客の一人であった。

廓に来るときには、自分の店で作りすぎた菓子と試作品の菓子を大量に持ってきて、皆で分けるように言うのも毎回のことであった。生まれて初めて目にする高級な菓子をつまんで食べて喜ぶ夕顔の姿に千鳥などは呆れた。
「私なんて、ひと月ほどは、これからお客のお相手と思ったら、朝から何も喉を通らなかったのに、この子は意外と気楽でいいかもねえ」と笑った。

赤い布団の上でこの丸福菓子のご隠居は、
「こんな爺が、べっぴんさんの初物を頂くんじゃ、罰があたるじゃろな。
こんな爺に女にされるんじゃ、気の毒じゃなあ」と何度も恐縮して繰り返し、夕顔は却って処女を偽っていることが心苦しくなった。

「気色悪いやろうが、もうすぐ良くなるから、ちょっと辛抱な」
と言いながら、夕顔の乳首を口に含み、舌の先でゆっくりと転がした。
夕顔は、それだけで胸から熱い波が下のほうに押し寄せ、身体の奥が熱くなって、どろりとした蜜が溢れ始めた。足を固く閉じながら身を捩っていると、
「そんなにいいか、敏感な子だね」と腿の隙間から掌が差し入れられた。
夕顔は、初めて経験するうねりに戸惑いながらも、ご隠居の体温を背中で感じた。
そうしているうちに、祖父に抱かれていた幼いころを思い出し、涙がこぼれた。
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