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振り向けば…
第15章 今日だけやで…
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「いっつも、こんなに遅いんか?」
少し怖い顔の悠真が聞いて来る。
「違うよ。」
思わず苦笑い…。
私が新人だから会社に扱き使われてると悠真が勘違いをしてる。
突貫工事になる現場は少ない。
その代わりに終わった翌日は平日であっても必ず休みをくれる会社。
無茶な受注発注が頻繁にある建築の世界では、そういう形で休みを取るのは当たり前の事。
「先に…、これを渡しておく。」
悠真が私に銀行の封筒と紙切れを差し出した。
銀行の封筒はお金…。
悠真は美保を信用してないと感じる。
もし美保にお金を渡せば美保がそのお金を持って男のところに行く可能性を考えてる。
美保の手術のお金…。
自分の初めてのお給料よりも、そのお金の方が凄く重くて大切なものだと思った。
紙切れには悠真のサイン…。
父親の同意書…。
何故、悠真が…。
美保が勝手に本当の父親の名前を書けばいいだけじゃない。
私が顔を歪めると悠真が私の顔を撫でて来る。
「疲れてると思うけど、頼んだからな。」
私を信頼してる言葉。
「うん…。」
強く頷いた。
「何かあったら…。」
「悠真に連絡する。」
「うん…。」
少しだけ2人で抱き合った。
悠真の温もりと心臓の音で私の気持ちが落ち着いてくのがわかる。
明日の手術に悠真は来ない。
私と美保の2人だけ…。
手術の後は美保を一晩、私の家に泊める。
手術後は1時間で帰れるらしいけど、その日1日は寝てなければならない美保は実家には帰れない。
表向きは私の家で久しぶりの女子会をするという形にして私の部屋で美保を寝かせる事になる。
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