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振り向けば…
第22章 贅沢…



ごめんね…。

来年にはなるけど、おじいちゃんが建てたアパートと我が家を改築する事が決まったからだ。

おじいちゃんとの思い出が無くなっちゃう。

だけど老朽化が進むアパートは危険だからと改築に踏み切る事にした。

アパートの住民に退去命令を出したり、設計をするのに今から約1年の時間を費やす事になる。

一応、基礎は立派な基礎だからと上の建物だけを丸ごと作り変えるという工事。

そのついでに我が家も建て替えようという計画。

おじいちゃん…。

おばあちゃんと楽しくしてる?

長く手を合わせる私に


「じいさんがなんか言うたか?」


とふざけて悠真が聞いて来る。


「うん、おばあちゃんとラブラブ中だって…。」

「羨ましい話やな。」

「うん…。」


相変わらずの私と悠真を見ておじいちゃんはどう思うたのだろう?

その日はのんびりと悠真と過ごす1日だった。

そして春になる。

また震災が発生した。

熊本地震…。


「お父さん…。」


荷物をまとめるお父さんに声を掛けた。


「お母さんと来人を頼む。」


お父さんが私に家族を託す。

私はお父さんの傍に居たいのに…。

まだ建築家として半人前の私にそんな権利はない。

会社でも熊本地震の話で持ち切りだ。

領収書の精算をして貰おうと事務室に行った。

事務のおばさん達が雑談をしながら私の領収書の処理をする。


「でもさぁ…、被災も段々と贅沢になってるよね?」

「わかるわかる。ちょっと要求し過ぎてて募金とかしたい気分にならないわ。」


おばさん達の会話に驚いた。


「贅沢…、ですか?」


被災した人達だよ?

避難してるんだよ?

それのどこが贅沢なの?

お父さんは困ってる人が居るからとわざわざ熊本まで助けに行ってるのに…。

おばさん達の会話が理解出来ないと思う。


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