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姦譎の華
第4章 4



 というわけで結婚することになりました、と伝えたら、愛紗実は静かになってくれるだろうか。絶句してくれなくてもいい、少しくらいプライベートの充実ぶりを誇示して憂さを晴らしても、誰にも咎められはしないのではないだろうか──

「……降りてくるわ」

 エレベーターの階数表示が減り始め、多英は回想にも、やにわに湧いた出来心にも蓋をした。ドアマンへ向け小さく人差し指を回す。

「やあ、待たせてすまない」

 開いた扉から出てきた敏光が秘書たちを見つけて声をかけた。続いて二人の男が降りてくる。

「親分をつかまえちゃってすまんねえ」

 お辞儀をした多英たちへ片手を上げたのはK省現役幹部、敏光とは大学での先輩後輩の間柄、後ろから追いてくるのは子飼いの部下、同じくキャリアである。

 メシでも行こう、旧交を温めよう。

 誰でもやっていることだが、それぞれに立場があり、それぞれに背負う思惑がある彼らの場合、ただ昔話をするというだけでは終わらない。少なくとも、二人の身分を知った者はそうは見なさないだろう。

 よって、多英と愛紗実が同席していたのだった。

 頑張ってくれている秘書たちをねぎらうために、敏光がホテルに入っている寿司屋へと連れてくる。しばし舌鼓を打っていると、「偶然」、先輩が同じように部下と飲もうとやってくる。個室ではないオープンなカウンター、何も話さないで別々に飲み食いするのはむしろ不自然で、幹部を挟んで多英と愛紗実が座り、敏光と子飼いが隣どうしで飲み始めることになる。

 敏光はずっと、子飼いが最近始めたゴルフについて話をしていた。好きすぎて、初心者にとっては熱量ありすぎの講釈に、子飼いは困っていることを隠しきれない笑顔でいちいち頷きながら聞いていた。

 ただし、敏光も子飼いも、わかっていてやっていたことだった。
 それは多英たちもしかりだ。

 社会的地位のありそうなオッサンが、女二人に挟まれてデレデレと御機嫌な様子は、実に見苦しいものである。しかし裏を返せば、人々の冷笑を誘う、それだけの話で、ある意味オッサンだからこそ、飲みの場での日常茶飯事な光景となる。
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