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姦譎の華
第4章 4
 こんなケース問題、検定の本試験や参考書のどこを紐解いても書かれていない。細微な調整を是とする官僚社会の扉をスムーズに開くため一番物を言ったのは、秘書としての見識や技能などではなく、ドアをノックした者の器量だった。

「とにかく今日は有名人に会えてよかったよ。いやね、ずっと野村ちゃんに会わせろ会わせろって言ってたのにさあ、よっぽど『箱入り娘』にしときたいらしい、意地悪してなかなか会わせてくれなかったんだ。本物は世間で言われている以上だった。実に楽しい酒だった」

 幹部が手を差し出してくる。

 店を出た直後、敏光と幹部が「ちょっと連れション」と言い置き、ついでに子飼いも連れてトイレへと入った。用を足しながらどんな話があったのか、あとで敏光から聞き出しておかねばなるまいが、それ以前に、この幹部がトイレを出る前に念入りに手を洗ってくれたかが心配されるところだった。

 そんな危惧はおくびにも出さず、右手で握り返し、斜め下から受け止めるように左手も添えると、

「滅相もございません。わたくしどもには勉強になるお話ばかりでございました」
「ほう、そうかい?」

 握手にしては長い時間が経ったが、幹部は手を離してくれなかった。それどころか握った手を九十度回し、甲を上向かせてくる。

「そういうことなら、このあと華村さんには特別に、『補習』をしてあげてもいいんだけどねぇ……」

 もう一方の手で覆われ、撫でられた。

 背に鳥肌が立ったが、あくまでも仄笑み顔を保ち、ただし眉尻をわずかに下げ、分不相応な誘いを受けて困ってしまった女に扮していると、

「先輩」
「おっと、お父様がお怒りだ」
「じつはなかなか言えなかったんですが、華村君は、その、息子と……何というか」

 歩み寄った敏光に小声で伝えられ、幹部はしばし言葉を失った。

「なんだい、それじゃいずれ本当に、野村ちゃんの娘になっちまうってことか」
「それは本人たち次第ですから、僕にはわかりませんけどね」
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