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旧家のしきたり
第3章 最初の試練
夜まで少し時間があったのは幸いだった。僕は美穂と二人だけになり、どうするか相談した。

「田舎の古い慣習だ。無理して従う必要はないよ」

「でも、それでは私たちの結婚はお母さまに認められないわ。私は嫌。それに優斗さんも家に戻ることができなくなるんじゃないの?」

美穂は、しゃくりあげている。

「それはそうだけど……。美穂は、これを受けるの? 受けられるの?」

「それも嫌……」

僕たちは黙り込んだ。万事休すだ。何もアイデアが浮かばない。美穂の鼻をすすり上げる音だけが僕の耳に届いた。

どのくらい経っただろう。美穂の手が僕の手を握ってきた。

「でも……」

美穂が呟くように言った。落ち着いてきたようだ。もう涙を流していない。

「でも?」

「……でも、優斗さんが許してくれるなら、私、やってもいい。耐えてみせる」

「本当に?」

美穂が頷いた。

「優斗さんは迷ってるの?」

「うん、迷ってる。美穂を他の男に抱かせたくない」

「ありがとう。でも私は大丈夫。どんな目にあっても私は負けないし、変わらない。私は優斗さんを好きでいられる。だから心配しないで」

美穂は僕へ笑顔を見せた。本当に辛いのは美穂のほうなのに……。それが僕を決心させた。

「わかった。やろう」

僕は決めた。この勝負受けて立とう。僕と美穂は愛し合っている。心と心で結ばれている。決して負けるわけがない。

「ありがとう、美穂」

僕は美穂を強く抱きしめた。

「美穂、僕もどんなことがあっても君を愛し続ける、絶対だ」

「本当よ。絶対私を嫌いにならないでね。嫌いになったら一生恨むからね」

僕たちは泣きながら笑った。
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