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花の輪舞曲
第1章 夜啼鳥の小夜曲
…笙子の潤んだ瞳の中に、岩倉の引き締まった裸体が写し出された。
細身であるのに質の良い筋肉に覆われた美しい身体…。
…愛おしい男の肉体だ…。

胸が甘く苦しく締め付けられる中、ふと下肢に視線を転じ…息を飲んだ。

…岩倉の牡は硬く高い角度を保って屹立していた。
それは、少女の笙子の漠然とした想像の範疇にはあり得ないほどの大きさと…禍々しいほどに鋭い凶器のように見えたのだ。
目を離さなくてはならないのに、離すことができない。

…頭が割れるように痛い…。
と、同時に…眠り薬を使われたかのようなぼんやりとした睡気に襲われる。
視野がぐにゃぐにゃと歪みだす。

…遠くで雷鳴が轟いていた…。
暗い…暗くて寒い場所だ…。
…ここは…どこだろう…。

黒い服を着たのっぺらぼうの悪魔が、笙子の手を掴む。
恐ろしい力で引き摺られ必死に足掻くが、無理やり生贄の台に乗せられる。
服を剥ぎとられ、のっぺらぼうの悪魔は己れの黒い衣装を脱ぎ捨てた。

手足を押さえつけられ、殴りつけられ…ナイフで切り裂かれたような激しい痛みが笙子を襲う…。

…あれは…あれは…!

笙子は鋭い悲鳴をあげる。
「嫌…嫌…嫌っ!助けて…!だれか…助けて…!」
…逃げなくては…ここから逃げなくては…!

必死で這い摺り出ようとするが、鉛のように身体が重くて、動かすことすら出来ない。

「助けて…殺さないで…お願い…お願い…!」

喉が張り裂けんばかりに叫ぶが、掠れたような弱々しい声しか出ない。
「…助けて…お願い…助けて…」
…息が…息が…できない…。

力なく地面に転がり落ちる笙子の身体が、力強く温かい腕に抱き上げられる。

「…笙子さん…!笙子さん…!」
…ああ…このひとは…私の…私の…

男の悲痛な瞳に、懸命に語りかけようとして…
笙子はそのまま、薄暗くほの温かい闇の中へと意識を沈ませていったのだ…。

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