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花の輪舞曲
第1章 夜啼鳥の小夜曲
数日後、笙子は以前のようにまた環の絵のモデルもできるようになった。
「…もう大丈夫?笙子ちゃん」
なるべく楽なポーズを付けながら、環は気遣わしげに尋ねた。

…数日見ない間に、笙子はどこか湿度を感じさせるひんやりとした色香を醸し出していた。
そして、秋の花を感じさせるように寂しげに微笑った。

「…ええ、大丈夫です。ご心配をおかけしました」

顔色を良くするためか、うっすらと薄化粧しているのもぞくりとするほどに美しい。
「…何があったの?笙子ちゃん…。
まさか、千紘が笙子ちゃんに酷いことをしたんじゃない?」
笙子は眼を見張り、首を振る。
「いいえ!千紘さんは悪くありません。
…私が…私の心が弱いのがいけないのです」
「どういうこと?俺に話してよ。俺は笙子ちゃんが好きだ。だから、笙子ちゃんが不幸そうにしているのは我慢がならない」

暫く環を見つめ黙っていた笙子は、決意したように口を開いた。
「…本当はこんなこと、お話しすべきではないのかも知れません。けれど、千紘さんのことを誤解していただきたくないので、申し上げます。
…以前にも少しお話ししましたが…私は…」

…そう静かに語り出した笙子の過去は、環の想像を絶する余りにも痛ましく、壮絶なものであった。

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