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花の輪舞曲
第1章 夜啼鳥の小夜曲
褥に二人で横たわり、岩倉は静かに口を開いた。
幼な子に寝物語を聞かせるように優しく話し始める。
「…初めてお会いした時の話をしましょう。
…貴女はお母様の陰に隠れて俯いていらした。
お母様の手を握り締め、ずっと俯いて一言もお話にならずに…」
「恥ずかしいわ…。あの頃の私は、まるで子どもに戻ったみたいに周りが見えずにただただ怯えた日々を送っていたのです…」
…悪夢に怯え…暗闇に怯え…心を閉ざし、部屋に引きこもっていた。
両親以外には誰にも会いたくなかった…。

岩倉は優しく笙子の髪を撫でる。
「少しも恥じることはありません。
あの日々は貴女が懸命に闘ってこられた証しなのですから。
…あの日、私がご挨拶をした時に貴女が初めてお貌を上げてくださった。
…あの時の衝撃は今でも私の心に焼き付いています」

…美しかった。
魂が震えるとはこのことだと初めて思い知らされた。
…射干玉の夜よりも尚深い黒い瞳…形の良い三日月眉…彫刻刀で繊細に刻んだような美しい鼻筋…露を含んだ初夏の薔薇のような美しい色合いの唇…海に睡る真珠色の繊細な肌…。
白いドレスに包まれたその華奢な身体は、か細く今にも崩れ落ちそうに頼りなげに見えた。
何よりもこの少女から漂う儚げで…寂しげな表情に、岩倉は心惹かれたのだ。

「…取り返しのつかない恋に堕ちたと、その時私は思いました。…しかしそれは、恋の喜びの瞬間でもあったのです」
…こんなことは、生まれて初めてでした。
笙子を引き寄せ、その白く清らかな額に口付ける。
「…貴女は?私をご覧になって、どうお感じになりましたか?」

笙子は岩倉の引き締まった端正な貌に手を伸ばす。
見つめ合い、頬を染めながらそっと告白する。
「…恐る恐る貌を上げた先に、貴方がいらっしゃいました。
…まず、綺麗で清潔なお手が見えました。それでとても安心して…それから…貴方のお貌が見えました。
とてもお優しい目をしていらっしゃいました。
お貌立ちがとても綺麗で…見惚れてしまいました。
それから…お声がお優しくて…。
私の不安を取り除いて下さるような落ち着いたお声で…。
…私がずっと思い描いていた…夢の王子様だと思いました…」
岩倉の貌が破顔する。
「…初めて自分の容姿に感謝しますよ」





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