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セイドレイ【完結】
第22章 種

それから約30分後。
終業のチャイムが鳴ると同時に、貴之は次の授業までの短い休憩を利用して、一目散に保健室へと向かった。
授業中に体調不良を訴えた亜美が気がかりで、その様子をうかがうためだ。

保健室の扉の前で、貼り紙が目に入る。

『本日、午後は養護教諭不在の為、保健室を利用する生徒は職員室へ行き、本山先生に許可をもらってください』

「(──開いてる…のかな…?)」

貴之が保健室のドアに手をかけ、そっとスライドさせようとした、そのとき──。

「──わっっ?!」

「おっ──!とぉ……、びっくりさせんな!」

ちょうど保健室から出てきた本山と鉢合わせになる。

「──で、どうした水野。保健室になんか用か?」

「え、えーと…、たっ、高崎さんの様子が気になって…」

「そうか。次の授業は受けるみたいだぞ。なんならついでだ、お前が教室まで送ってやれ。──おーい、高崎~、水野が心配して来てるぞ~」

本山がそう声をかけると、保健室の中から亜美がひょっこり姿を現した。

「──亜美っ…大丈夫か?」

「あ、うん…。心配かけて…ごめんね。ちょっと休んだら楽になったよ」

「そ、そっか…。ならよかった…」

「おい2人とも、早く教室に戻れ。もう授業が始まるぞ──」


本山は、教室へと戻っていくふたりの後ろ姿を複雑な表情で眺めていた。
そして、その若いふたりにこれから降りかかる運命について、思いを巡らせたのだった。






「──あれ、亜美?口になんかついてる…?」

「えっ…?うそ、なに??」

亜美の下唇の少し下に付着しているもの──それを見た貴之は、一瞬眉間にシワを寄せた。

貴之はそれを指でつまみ取り、亜美に見せる。

「──これ」

そこには、太くちぢれた毛が1本──。

それがかぎりなく陰毛に近い質感であることは、亜美も貴之も同時に理解していた。

「──な、なんでだろ…?あれかな?多分、保健室のベッドに毛が落ちてたのかも…。水野くんが気づいてくれてよかった。取ってくれて…ありがとう」

亜美は必死に取り繕う。
もちろんそれは、本山の陰毛に違いない。

「お、おう…気づいてよかったよ──」

貴之はどこか腑に落ちなさを感じつつも、亜美を連れて教室へと戻った。


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