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セイドレイ【完結】
第25章 暗転

雅彦は今、新堂を巻き込んだことをはっきりと後悔していた。

こんなはずではなかった──と言ってしまうのは簡単である。
しかしそれでは、あまりに都合がいいうえに自業自得であろうことも重々承知していた。

当初と現在では、亜美に対する感情が変化してしまった雅彦。

そして、亜美もそのはずだと──確信を持つようになった。

終業式の夜、亜美は「この家で生きていく」との覚悟を見せ、さらには「雅彦の子を産み、育てたい」とまで言ったのだ。

だから雅彦は、誰にも言わずに1人で推し進めるつもりだったこの偽装妊娠の件を、当事者である亜美に暴露したのである。

今や共通の敵となった、新堂を欺くために──。

近ごろどんどんエスカレートしていく新堂の策略を阻止し、この闇の売春ビジネスを畳まなければならない。

このビジネスが廃業に至れば、雅彦はその損失の責任を取らされるばかりか、さらなる借金を背負うことになるだろう。
なにより相手は新堂であり、一筋縄ではいかないことも分かっていた。

しかし──雅彦はもう、亜美をそばに置いておくためなら、どんな罰でも背負うつもりだった。

そのくらい、雅彦の亜美に対する歪んだ愛情は深まってしまっていたのである。

一方、自分が知らぬ間にピルを服用させられたことを知った亜美は、ひとまず今は自分が妊娠できる状態ではないことに、ひどく安堵した。

「雅彦の子を産みたい」などと口走ったことが、結果的に自分の身を守ることになったのである。

しかし──その裏で、亜美を妊娠させたという濡れ衣を着せられてしまった貴之。
亜美はそのことを想うと胸が張り裂けそうになると同時に、貴之をこんな恐ろしい男たちから一刻も早く遠ざける必要があると、あらためて確信したのだった。

亜美は、自分が貴之にしてしまった罪へのせめてもの償いとして、武田家で生きていくという運命を受け入れたのだろうか。

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