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セイドレイ【完結】
第25章 暗転
そのころ──、慎二と田中は二手に分かれ、亜美を探して公園の中を駆け回っていた。
「ハアッ…ハアッ…ちっくしょう!あいつ、どこ行きやがったんだ…」
するとそこへ、別の場所を探していた田中が戻ってくる。
「し、師匠っ…どうです?こっちは見当たらなくて…。次はあのへん探してみますか??」
「うん…。ったく、一体なんなんだ、あのタカってヤツは──」
まずいことになった、と慎二は思う。
まさか "タカ" の正体が貴之であると知らぬ慎二は、冷や汗が止まらなかった。
「──師匠、そもそもあの "タカ" って男の素性は…?」
「そんなの…詳しくは知らないよ。あんなサイトで出会ったんだし。今思えば怪しいところはたくさんあったけどさ。亜美に目隠しとイヤホンさせろって言ってきた時点で、最初から拉致目的だったのかもしれない…クッソォ!もっと用心しておくべきだった。もしこんなことが親父にバレたらっ…」
「親父に…?お、親父って…師匠のお父さんですか…?」
「あっ…えっとぉ…、ん、まあ、うん。とっ、とにかく、こんなことがバレたら、俺らだってタダじゃ済まない、ってこと!亜美は未成年だし…警察に通報するにしても、そもそも俺らがなにしてたんだ、って追及されたらヤバいでしょ??だから、なにがなんでも今はとにかく亜美を探し出さなきゃっ…」
「そっ、そう…ですね…」
慎二は焦っていた。
亜美の身を案ずるのであれば、今すぐに警察へと届け出るのが最善の策であるのは承知している。
しかし、亜美は "普通の女子高生" ではない。
その存在自体が、あの闇の売春ビジネスの "最高機密" なのだ。
それを不用意に外へと連れ出し、何者かによって拉致されたなどということが知られたら──その影響は計り知れず、もはや武田家の問題で済む話ではない。
慎二の顔が、だんだんと青ざめていく。
足がガクガクと震え、恐怖におののいているのが見て取れる。
「──終わった…。なにもかも…終わりだっ…!チクショウ…!俺は一体どうすればっ…──」