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セイドレイ【完結】
第26章 形勢
時は終業式の翌日まで遡る。

その日、部活の指導のため出勤していた本山は、新堂から呼び出しを受けていた。

嫌な予感がしながらも、部活を終えた本山は、新堂の待つ理事長室のドアをノックする。

「…失礼します」

「ああ、入りたまえ」

以前、亜美との関係がバレた時以来に訪れるこの部屋。
本山は緊張で心臓が張り裂けそうになりながら、理事長室のソファに腰掛ける。

「きょ、今日は一体どのようなご要件で…?あの、先に言っておきますと、高崎亜美にはあれ以来…個人的な接触はしておりませんがっ…」

上ずった声で本山が言う。
実際には、一度だけ保健室で亜美と性行為に及んだが、まさかそれがバレていたとは考えにくい。
あの日、新堂は終日出張だった。
細心の注意を払い、証拠も残らないようにしたはず。


新堂は小さくため息をつくと、タバコに火をつけ、話し始めた。


「……実はね、保護者からこんなタレコミがあったんだよ」


新堂はそう言うと、スマホの画面を本山に見せる。

そこには、もう何度見たか分からない、『セイドレイ』にアップされた亜美の痴態を映した動画の一部が再生されていた。

本山は、驚いて思わず声をあげそうになるのを何とかこらえ、あくまで平静を装い、その動画を見つめる。


「…この動画の少女に見覚えはないかね?」

「…とっ、言いますと…?」

新堂からの問いかけに、言葉を詰まらせる本山。
どう答えておくのが正解なのか。
真冬にも関わらず、本山の額からはじわりと汗が滲み始めていた。

「ふんっ…とぼけるのは勝手だが、相手を選んだ方がいいんじゃないか?この動画の女はうちの生徒だ。お前が一番よく知っているだろう?いいか、もう一度だけ聞く。この動画の女は誰だ?」

普段の温厚な雰囲気からは想像できない、新堂の静かでありながらもその凄みと迫力に圧倒される本山。
本山は本能的に、この男に逆らうべきでは無い…との答えを出した。

「…たっ…高崎亜美…でしょうか?」

「…そうだよなぁ?では、なんでこんな動画が出回っているんだ?」

「そ、それは…!私の…知るところでは……」


「…ほう?分かった。では本山先生、今日であなたはクビだ。今までご苦労だったね。もう帰ってもらって構わんよ」

「なっ…!?」

「何だね?…クビだと言ったんだよ。頭だけじゃなくて耳も悪いとはな」
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