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セイドレイ【完結】
第29章 ぬけがら
新堂の察しの通り、武田家の門の前には、手紙を握り締め、肩で息をする貴之が立っていた。

雅彦は玄関を出ると、貴之の元へ近付いて行く。

「…なんだ。亜美なら家には居ないぞ」

素っ気ない雅彦の言葉に、貴之は握っていた手紙を雅彦の胸に叩きつける。

「…おっさん、こんな手紙寄越したって俺は納得出来ねぇ!亜美をどこに隠してる!?ていうか、あんたらは亜美に一体何をしてきたんだっ!?」

「…隠す?まぁ確かに、隠したと言えばそうなるか…」

「なっ…何だよ、それっ…」

「…ワシの息子…慎二と亜美の関係はお前も知っているな?そしてあの動画サイトの存在も…」

「…あぁ、知ってるよ。おっさんの息子が、亜美のことずっとレイプしてたんだろ?てか、おっさんもそれ知ってたんなら何で止めないんだよ!?自分の息子だろ!??」

「まぁ落ち着いて聞け。ワシも最初は知らんかった。もし知っていたら止めるに決まっているだろう?ちなみに言っておくと、あれはレイプなんかじゃない。そもそも慎二をたらしこんだのは亜美の方からだ」

「なっ…!?お、おい、冗談だろ……」

「…慎二だけじゃなく、長男の健一まで誘惑してな。ワシの知らんところで、亜美はワシの息子二人をたぶらかしていたんだよ。挙句の果てに、どっちの子か分からんが妊娠してしまってな。それで泣く泣く、亜美がワシにどうにかして欲しいと相談してきたんだ」

「…嘘…だろ?」

「…まぁ、お前の子かもしれんがな。とにかく、ワシは産科医だ。産ませるわけにはいかんから処置はしたよ。しかし、このままでは亜美の存在によって我が家が崩壊してしまう。そこで、息子達から亜美を一旦遠ざけるために、留学させようと考えた。しかし、心底亜美に惚れ込んだ息子達は猛反発してな。特に健一はうちの大事な跡継ぎだ。こんなところで道を誤ってもらっては困る。…そこで、亜美が失踪したことにして、何とか諦めてもらおうとした、という話だ」


「ちょっ…ちょっと待って、じゃああの日、亜美を連れ去ったのは……?」


「……ワシだ」


あまりの衝撃に、呆然と立ち尽くす貴之。
力の抜けた手から、亜美の書いた手紙がひらりと地面に落ちて行く。


「そんなっ……そんなことっ……あるかよ……」


貴之の頬を一筋の涙が伝う。
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