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第19章 別れ

「もしもし」

「あ、俺」

「わかってるわよ、何？」

「あーいや、なんてゆーか…」

「何かあったの？
徳永さんのこと？」

まぁ、今の俺にはそれしか無いよな

「うん、ちょっと進展あった」

「そう」

「旦那に離婚届送ったって」

「あら、わりと早かったわね。
ってことは
桜ちゃんも父親のこと
嫌ってたってことかしら？」

ムカつくくらい
なんでも分かる姉ちゃんだ

「そうらしい」

「で？
離婚してくれそうなの？」

「真穂の話だと
すぐ離婚してくれるか
それとも絶対離婚しないってなるか
どっちかだって。
真穂がいなくても仕事に支障ないことがわかったろうし
今はまた違う事業に足突っ込んでるらしくて
正直、真穂のこともさっちゃんのことも
もうどうでもいいんじゃないかって」

「なるほどね…」

「けど借金のこともあるから
追っかけ回されないとしても
離婚してくれるかどうかは
わからないらしい」

「…そう…
借金が厄介ね。
ま、どう出るか待つしかない訳ね」

「うん」

「で？」

「え？」

「近況報告だけ？」

「いや」

「何よ」

言いにくいけどさ

「俺に…なんかできることないのかな。
待ってるだけとか
…落ち着かねぇ」


「巧らしいわね」


姉ちゃんの声は
妙に穏やかだった

そして
少し間をおいてから
こんなことを言った


「安心させてあげるしかないんじゃない？」


「安心？」


「そう。

いつまででも待ってる。
別れたらいつでも
ううん、すぐに迎えに行く。
ちゃんと守る。
桜ちゃんのことも心配するな。

そう言って
安心させてあげることしか
できないんじゃないのかな…

不安なはずよ、徳永さん。

あたしもそうだったもの…

子供を連れての離婚は
不安でたまらないものよ。

だから
不安にならないように
何度でも
そう言ってあげればいいんじゃないの？」


「そうか…」


「あとは…」


「あとは？」


「巧が
もっとしっかりすることね。

桜ちゃんが
他人の子だって事に
変わりはないんだから」


「…うん」