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舞い降りた天使
第2章 パッションフラワー


「徳永さん?」

「な、なに?」

「どうか…しました?」


話に上の空な私が気になったのか
栗原くんは
食事の手を止めて
私を見つめた


少し様子が違う

それだけのことで
お箸を置いて
私を見てくれる栗原くんが

多分

好きなの

なんて…言えない


「ううん、ごめんね。
ちょっと寝不足で
上の空で…
あ、でもちゃんと分かったからね
ハーブティの飲み方。
今日、飲んでみる」


なんとか誤魔化さないとと
笑顔でそう言うと
栗原くんから
意外な言葉が返って来た


「嘘、つかないで下さい」


「…え?」


栗原くんは
いつになく真剣で
視線はあまりにも真っすぐで
私は
言葉を失ってしまった


「そういうとこです」


そ、そういうとこ?


「ダメですよ、心配ごと
一人で抱え込んじゃ」


「……」


抱え…こむ…

私はその言葉で
一瞬にして現実に引き戻され
日々の悩みが脳裏を駆け巡りはじめた


頼る身内が
近くに全くいないこと

不安なことがあっても
パパは相談に乗ってくれないこと

パパに借金があること

大野先生に
いつも注意されること

また今日も
学童保育にお迎えに行くこと

学童保育の先生に
小言を言われないために
せっかく塗ってきたマニキュアも
ランチが終わったら
除光液で落とさなければいけないこと……



「徳永さん」


「……」


「大丈夫?」


私の目に
涙がこみ上げてきたのは
もうバレてるかもしれない

でも
そんな自分を見られたくなくて
私は膝の上で握りしめてる手に
視線を落とした


嫌われたくない

何か特別なことを
願ってるわけじゃない

ただ楽しく
また
こうして栗原くんと
二人きりで食事がしたいだけ

だから
明るく振る舞わなきゃ

ハーブティーも買う

沢山は無理だけど
ちゃんと買うから

だからお願い


こんな私と
一緒に居るのは嫌だなんて思わないで


そう心の中で叫びながら
ぎゅうっと目を閉じると


私は

誰かに


ふわりと抱きしめられた
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