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舞い降りた天使
第7章 桜

さっちゃんは
登校拒否の本当の理由を
自分自身分かってないのかもしれない

学校に行けるようになった
その理由の一つが
字が書けるようになったことだったんだろう

もしかしたら
上手な字を先生に褒めてもらえたのかもしれない
そんな小さな自信が学校へ行けるきっかけになったのなら
頑張ったさっちゃんを
そして
そんなさっちゃんを見守った真穂を
俺はすごく抱きしめたい気持ちでいっぱいになった


「すごいなー!
毎日学校に行ってるんだ」

「うん。
でもバカだけど(笑)」

さっちゃんは
両手で口を覆い
クスクスと笑った

「勉強なんて
これからいくらだって
できるようになるさ。
けどすごいなー」

「…?」

「学校に行ってるのもすごいし
習字をずっと続けてるのもすごい」

ニコニコとさっちゃんは笑った

子供の笑顔は
本当に最強だと思う

こんな笑顔をする子に育てた真穂のどこが
『できが悪い親』なんだよ

「けどもっとすごいとこ見つけた」

「え?」

「僕にいろーんな事
上手に話してくれて
こうしてお母さんのこと
ちゃんと待ってるところ」

そう言うと
さっちゃんは唇を噛みながら笑顔になった

唇を噛む癖も
同じなんだな

「さっちゃん」

「ん?」

「お母さんお腹空いてるかも。
僕と一緒におにぎり買いに行こうか」

「行きたい!」

「よし!行こう!」


俺は
暇になってしまったさっちゃんを連れて
休憩室を出た

まだ仕事してる人がは多いけど
なんとなく静かな廊下
さっちゃんは不安になったのか
また少し唇を噛んだ


「はぐれるといけないから
手、つなごうか」


さっちゃんは
コクっとうなずくと
小さな小さな手で
俺の手を握りしめた

その瞬間
俺はまた泣きそうになっていた

真穂の旦那のことを思い出したからだ

さっちゃんのランドセルには
ミサンガがついていた

多分
パパと同じものを
付けてるんだろう

それを見ても
ミサンガつけてやらない父親って…

こんなにいい子で
こんなに可愛い子なのに
なんで…


「お母さんは?」

「あ、うん。
お母さんは
あそこでお仕事してるよ」

俺はさっちゃんに
そっと真穂の姿をのぞかせ
そして俺達は
近くのコンビニへと向かった

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