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最後の恋に花束を
第9章 はじまりの冬
ー 私は… 貴方の恋人になりたい… ー
高鳴る心臓を抑えつけるように、彼の手をギュッと握る。少しずつ手に汗が滲んでいく。
交わる視線と続く沈黙を破いたのは、遙だった。
『 … 可奈 』
そこから続く答えは
聞かずとも分かっている。
「 … ごめん 」
「 … 本当にハルくんのこと 」
( 心から愛してしまった… )
そう伝えようとした瞬間
『 … ありがとう 』
その言葉を彼は放った。
とても穏やかな笑顔と共に…
『 可奈 … 嬉しいよ 』
彼は握られていない方の掌で髪を撫でる。
優しく、どこか切なく。
この恋を、本気にしてはいけないと
私は充分に分かっているつもりだった。
けれどもう… 抑えきれない
『 俺も可奈が好きだ 』
その言葉と共に、彼は自分の額と私の額をコツンと合わせる。彼の吐息が、私の吐息と交わり熱を帯びる。真っ直ぐに伸びていた視線が、俯くのがわかった。
『 けど、公には出来ない 』
「 … そんな事わかってる 」
貴方には守るものがあるから。
… そうでしょう?
『 それでもいいなら… 』
「 … え? 」
思わぬ言葉に本音がほろりと溢れる。
『 公に出来なくてもいいなら…
可奈が望むことを全うしたい 』
離れた額の先には、真っ直ぐに私を見つめる瞳。
その綺麗な瞳に息を飲む。
そして彼が、再び口を開いた。
『 可奈 … 愛してる 』