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君に熱視線゚
第51章 番外 後編


バタバタと駆ける足音が電話を通して晴樹の耳に届く。

晴樹はその様子を窺うように耳を澄ませた。

聞き覚えのある、立て付けの悪い引戸を蹴って開ける音が騒々しく聞こえる。

「はあっ…た、只今、実家に到着ですっ…」

息を切らせた苗からの報告に晴樹は静かに溜め息を吐いた。

「苗…、」

「あい…」

また怒られそうな予感がする…

晴樹の静かな口調に苗はごくりと唾を飲んで返事をした。

「一週間くらいで終わらせて帰るから…」

「うん…」

「頼むから大人しく待ってろよな──」

「……」

スーツの上着を椅子に掛けると晴樹はベットに腰掛けてネクタイを緩める。
携帯を耳に充てたまま、晴樹は最後まで静かな口調だった。

「返事は?」

「わかりました…」

晴樹は小さく息をついた。

「じゃ、今から寝るから…」

「うん…おやすみなさい」

「……」

「……兄さん?」

「……苗…」

そう呼び掛けてきた後に、受話口からチュッとキスの音が響いた。

「──…?」

「……っ…てか、お前も返せよっ!?恥ずかしいだろ俺だけこんなことしたら!」

「あ、ごみん…ここ日本の田中家だから。あは…」

「──っ…」


無言の苗に電話口で真っ赤になりながら喚き散らした晴樹に新妻は結構冷たかった──。

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