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君に熱視線゚
第52章 君に熱視線゚〜愛の鈍行列車〜



「おばさんに買い物も頼まれてただろ? 早く行かなきゃ。タイムセール」

「──…あっ…そうだった! 忘れてただよっ」

悟に言われ、苗はハッとして鞄を手にしていた。

慌てて椅子から立ち上がり、苗は前の入り口にいた晴樹の手を掴む。

「ロールペーパー98円、御一人様一個限りだっただよっ兄さんも来て! 悟ちゃんも急いでっ」

「……ちょ…」

苗は晴樹を引っ張りながら悟も急かす。

いいところの奥さんになったにも関わらず、苗の節約家は直らない。

「兄さん、途中で陸達も拾って!」

「陸達って…」

「御一人様一個限りなんだからっ」

「………」

言いたいことも何がしたいかもわかるにはわかる。

「三つ子を乗せたら定員オーバーになるぞ…」

「てやんでぃ! 暴走族だった男が何言ってんだかっ! 捕まらないように運転するのが兄さんの務めってえやつだよっ」

「………」
そうか?

反論したくても江戸っ子になった苗に話しは伝わらない。

たんに威勢がいいだけのべらんめいオヤジと化した苗は助手席で一人、意気込んでいる。

苗の勢いに何も言えぬまま、晴樹は車に苗と悟を乗せて小学校で陸達を拾うとスーパー「丸一」に向かうしかなかった……。

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