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愛のムチ
第5章 繁がり




 「最後だから!先輩に全部見てもらいたいんです。あたしが先輩のことをどれだけ想ってるかを伝えたいの」

 
 「へー。けど、これじゃ伝わんねえぞ?」


 乾いたそっけない先輩の声。

 伝わらない……そう言われて涙が溢れてくる。


 「それにお前、伝える相手間違ってる。ったく……ラケットに伝えてどうすんだよ?」


 あたりの両手を包み込むように手を握ってくれた先輩は、辛そうに切なく笑った。


 違う。きっとあたしの気持ちはちゃんと伝わってる。

 だけど先輩が求めているのはこういう伝え方じゃないんだ。



 先輩の瞳を見つめていると胸が締め付けられる。

 それと同時に奥から溢れてくる想い。

  
 「和馬先輩、だいすき……です」

 
 言葉にして伝えた瞬間、渦巻いていた思い出や感情やいろんなものがするりと出て身体が軽くなったような、そんな感覚に陥る。

 
 あたしの言葉に微動だにしない先輩。けれども気持ちを込めて先輩の視線を絡めとる。

  
 長い沈黙を破ったのは先輩の長い溜息。


 「はー……やっと言ったか。馬鹿亜美。ノロマ。
 ていうかお前実はドSか?なんで俺が放置プレイされなきゃならねーんだよ」


 ぶすっと不貞腐れて和馬先輩はあたしを見つめる。


 放置プレイって……どういうこと?首を傾げると


 「なんで俺が自分のラケットに嫉妬しなきゃなんねーんだってこと。
 ラケットとイチャイチャすんの見せつけられた挙句、先にお前ン中入るのがラケットだなんて許せねえ。」

 「あ……」     
 
 「それともうひとつ。お前がちゃんと告るのをここんとこずっと待ってた。待ちくたびれた。……亜美」

 「はい」


 “おあずけくらってた分、加減できねえから”


 あたしが答えるより早く先輩は上ずった掠れたような微かな声でそう囁くと、むさぼるようにあたしの身体に唇を落としていく。


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