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第3章 紫陽花の夜に

　ソンがお付きの者に許した〝数歩分の距離〟は彼の私的空間でもあり、最低限のプライバシーを守るためのものでもある。だが、実際にはソンと彼らの心の距離は、数歩分どころか都とこの国の果てほどもはるかに遠いのだ。






　そんなことをつらつら考えつつ歩いていたときである。突如として前方から、甲高い声が聞こえてきて、ソンはハッと立ち止まった。