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プロポーズ体験売り出します
第6章 いよいよ、3番目のお客様
「灯りがつきはじめたわ」

展望台から望む東京の街に光の粒が輝き始めた。
夢や希望や絶望や、日々の生活の証しがこの光なのかもしれない。

「暗闇が訪れても明かりがつく。俺らの毎日ってこうやって繰り返されるんですよね」

だから水神さんの恋にも・・そう言おうと思ったが、やめた。
だって、カッコよすぎるだろ?俺。

「じゃあ商売も終わったことだし、こっからはプライベートってことで、
 飲みにでも行きますか」

平凡なセリフでムードを変えた俺に、何か言いたげな目でのぞき込んできた
水神さんだったけど、そのまま黙ってうなずいてくれた。

「そうだなぁ、東京タワーときたらもんじゃ焼き、なんてどう?
 ベタな東京観光気分でね」

 
肩を並べて歩きながら、今彼女の心の中の本当はどの感情なのだろうと想像した。
ちらりと見る横顔は、ここに来る時の横顔よりも柔らかい。
本当に俺の言葉で目が覚めたのだろうか。
実はまだ迷っていて、ちゃんと別れられるかどうか自信が持てなくて、
それで虚勢を張って自分を奮い立たせているんじゃないか・・
俺の方があれこれ考えてしまった。
そんなの無意味だって解っているけど。
でも水神さんは口に出して言った。これで前に進める、と。
その言葉を信じるしかない。
大丈夫だ、彼女ならきっと、実行するはずだ・・・


 見上げた空には星は見えない。
街の灯りに隠されて、ほんとうは見えているのに見つけられないのかもしれない。
明るすぎる街の空に、本物の星を水神さんが見つけることを、
俺は祈ろうと思う。





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