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第2章 二人だけのオフィス
「体だけ仲良くしてたってわけじゃないですよ、ちゃんと心も仲良くしてた。
 だけど愛しているなんて真剣に相手を思うほどの気持ちじゃなかったってことです。
 全身全霊かけて相手を想う、そういう相手ってそんなに簡単に現れないと思いません?
 だから恋人と呼べるような相手はいなかったってだけですよ」

俺は自分の思う通りを言葉にした。
聞いたまり恵ちゃんは妙に神妙な顔をして、
菱沼君は真面目な人なのね、と細い声で俺に言った。

「そういう中野さんは?もしかして既婚者?でも指輪が無いですね」

言われたまり恵ちゃんは指輪のない左手を少し丸めた。

「菱沼君、ほんとに鋭いっていうか観察力抜群っていうか・・
 いい仕事してくれそうね。あなたを選んだ私って、案外見る目があるのかしら?
 今まではそう思えなかったんだけど」

「それって・・男を見る目、ですか?」

まり恵ちゃんはデスクの端を勢いよく叩いてから甲高い声をあげて笑う。
その後何も言葉を返さず弁当箱のふたを開けた。
だがすぐには食べず一度あげた箸を下ろして俺を見た。

「菱沼君、よろしく頼むわね」

まり恵ちゃんの瞳は輝いていた。鋭さもあった。
こんなに意志の強さにあふれている女性の眼を見たのは・・初めて、かも。





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