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不器用な夫
第2章 執事



「茅野君は…、こんな事をしなくていいんだよ。」


僕はそうハコに伝えてやる。

それから携帯を使い、ある人物に電話をする。


「公平(こうへい)?」

『はい、坊っちゃま。』

「ちょっと、今すぐに来てくれるか?」

『御意。』


用件だけで電話が切れる。

1分もすれば僕の部屋へ公平が現れる。

公平は僕の運転手兼執事だ。

今は僕の部屋の真下の部屋に住んでいる。

公平の父親である東 淳平(じゅんぺい)が僕の父の運転手兼執事であり、現在の国松家の執事長である。

嫁に逃げられた挙げ句に幼子である公平を抱えたまま失業した東を父が拾った事が始まりだった。

公平は僕の1つ上だから僕の遊び相手に丁度良いというだけで父は東を雇う事にした。

東は真面目で仕事熱心な男だったから執事長になるほどまで立派な執事に成長して父に寄り添い続ける。

その息子にまで執事を強いるつもりは国松家としてはなかったのだが、公平が大学を出た時に


「僕も父のように国松家に従います。」


と言った為に今も僕の執事であり、未来の国松家の執事長として公平は僕に寄り添う事になる。


「先生の執事?」


ハコが公平を見て目を丸くする。


「そうだよ…。」


そして公平はいずれハコにとっても執事として仕える事になるのだと僕はハコに教えてやる。

ハコの髪に触れてその綺麗な髪をひと房持ち上げて口付けをする。


「だから…、茅野君は着替えておいで…。奥様がそんな姿のままじゃ公平が困るだろ。」


僕の言葉に自分の姿を自覚したハコが頬を赤らめる。


「着替えて来る。」


パタパタと走り寝室へとハコが走り去る。


「これは、あの奥方様の所業でありますか?」


無残なキッチンを見た公平がクックッと意地悪な笑いを浮かべて来る。


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