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不器用な夫
第2章 執事



どうやって鍛えてるのかは知らないが、公平の僕の倍はある腕の太さや分厚い胸板を見れば公平と並ぶ僕はますます貧弱な男にしか見えない。

因みに、公平の父親である東もムキムキタイプの執事であり、よくうちの父が


「東は真面目だが脳筋なのが困る。」


とボヤいてる。

それでも僕は公平のような男の方がハコには好みだったかもしれないと自信を失くす。

脳筋でも男らしく精悍な顔立ちの公平の方が地味で平凡な僕よりも絶対に女性にはモテるのだからハコもきっと公平の方が良かったに違いない。

いや…、ハコには既に白鳥さんという執事が常に寄り添ってる。

学校内で一番人気の執事…。

女の子の憧れの王子そのものがハコの傍に居るのだからハコが嫁として僕に満足する事なんか絶対に有り得ないのかもしれない。

ますます自信を失くす僕を公平がくすりと笑う。


「坊っちゃまなら大丈夫です。」


根拠の無い公平の言葉。

僕が自信を失くすと必ず言う公平の呪文。

大学受験も教員試験もこの言葉で乗り切った。


「ですから、坊っちゃまは奥方様の事だけを考えておやりなさい。」


切ない顔で僕を見る公平に胸が痛くなる。

僕は公平を…。

いや…、今はハコの事だけを考えなければと僕は過去を振り切るように車から降りる。

学校からは少し離れた場所で公平は車を停める。

理由は学校の前は学生渋滞をするからだ。

ほとんどが運転手付きの車で登校する学生ばかりの学校前は必ずと言って良いほどに高級車で渋滞する。

その渋滞に巻き込まれたら僕も遅刻になりかねない。

それに学生達の手前、教師である僕が執事に甘やかされてる姿をあまり晒したくない。


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