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僕の美しいひと
第6章 すれ違う想い
…清良が学院を去り、二カ月が過ぎた。
季節は早くも秋へと移ろいはじめていた。
郁未は粛々と仕事を精力的にこなしていた。
秋は新入生も多い。
まず、集団生活に慣らす為の教育にも力を注がなくてはならない。
また、就職を目指す生徒たちには就職先の会社への根回しや斡旋、面接の練習など…目の回るような忙しさであった。
…けれど、忙しい方が郁未には都合が良かった。
ふと、心の隙間が出来ると清良の面影が浮かんでくるからだ。

…清良は、元気だろうか…。
ちゃんと高遠家に馴染んでいるだろうか…。
使用人たちと上手くいっているだろうか…。
心配ごとばかり、浮かぶのだ。

郁未は、高遠侯爵夫妻には今後こちらと関わりを持つことを固辞した。
夫妻は気にしないと言ってくれたが、どこから清良の過去が漏れるか分からないからだ。
郁未の胸中を察した夫妻は、郁未に厚く礼を述べた。
「分かりました。清良は必ず幸せにいたします。
嵯峨様のご好意を決して無駄にはいたしません」


…清良の近況は、図らずも郁未の母の婉子が届けてくれた。

「郁未さん!あの時お茶を淹れて下さったお嬢様は、高遠様のお嬢様だったのね」
婉子は大磯から押しかけてくるなり、目を丸くしてみせた。
「お母様…。清良がここにいたことは、内緒ですよ」
釘を刺す郁未に首を振ってみせ、近くのソファに腰掛けた。
「分かっていますよ。伊津子様に伺ったもの。
貴方が本当に清良さんの将来を慮ってくださってありがたい…て。
…ああ、でも残念ねえ。
こんな出会いでなければ、あのお嬢様を郁未さんのお嫁様にお勧めできたのに…」
家政婦が持ってきたお茶を婉子に淹れながら、ため息を吐く。
「…歳が違いますよ」
「一回りくらいどうってことはないわ。
私とお父様なんか三十近く違うのよ」
屈託のない婉子に苦笑してみせる。
「…清良は生徒です。そんな感情はありませんよ」
「…ほんとに呑気なんだから。
あんなに美人で素晴らしいお嬢様は二度と現れませんよ」
呆れたように肩を竦める婉子に、郁未はさり気なく水を向ける。
「…清良はどうでしたか?
お母様はお会いになったのですか?」








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