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狂恋 ~狂おしい恋に身を焦がす~【BL】
第1章 10年ぶりの再会
けれどオレの首元に顔を埋めている利人の頭を、優しく撫でる。

初めてセックスをした後、利人がオレにしてくれたように。

「…ねぇ、雅夜」

「ん~?」

「一年もあれば、身辺整理できますよね?」

余りに唐突な言葉に、頭を撫でる手が止まる。

「…えっ?」

「と言いますか、一年も必要ないでしょう?」

顔を上げた利人の表情は、あの悪魔の笑みを浮かべていた。

蕩けてしまいそうなほど甘く、そして毒の含んだ笑みを。

「お前…何言ってんだ?」

「あの子会社の営業成績、かなり悪いの知っています? 全ての子会社を調べて分かったんですけど、ワースト3に入るぐらい悪いんですよ」

「それは知ってる…」

事務なんてやっていれば、特に会社の内情には詳しくなる。

親会社が大手なせいか、その上にあぐらをかいているようなもんだからな。ウチの会社は。

「それで本当は私の役目、立て直すことではなく、片付ける準備をすることなんです」

片付け…ってまさかっ!

「潰すつもりなのか? ウチの会社っ! って、うっ…」

つい力んでしまったせいで、オレの中にある利人を締め付けてしまった。

「ちょっ、いきなり興奮しないでくださいよ」

さすがに締め付けがきつかったのか、珍しく苦悶した表情を見せる。

「悪い…。でもびっくりして」

しばらく息を整えていると、何とか力が緩んだ。

「はぁ…。まあ言い方は悪かったですけど、事実そうなんです。それでも使える人材がいれば、見つけてこいとの上からのお達しで」

…本格的に見捨てられたな、ウチの会社。

「でも父から言われたことは違うんです」

「はっ? 何でそこでお前の父親が出てくるんだ?」

「父はおもしろいことが大好きですから。それで本当にあの営業部を立て直し、一年間で営業成績を上げれば、私は実家の会社を継ぐことができるんです」

どういう条件だよ。

っていうか、他人の会社を巻き込むなんて、やっぱり異常な血筋だ。
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