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MILK&honey
第4章 「私の御守り」

   *

「座れたねー?でも、寝ちゃいそ……この線、寝たらどこまで行っちゃうのかなあ」
「終点は、他県だよ。そこまで行ったら、帰って来れないかも」
「それはやだなー」

 お兄ちゃんちに行くために、普段は乗らない電車に乗った。
 ヒメはほんとに着いて来てくれて、運良く二人で並んで座れた。

「これ、聴いても良い?」

 イヤホンを出して、ヒメに聞く。

「うん。私も聴こうかな、るりの御守り」

 ……るりの御守り。
 ヒメがそう言ったのは、私の大好きな人の歌の、プレイリストの事だ。
 私がよく聞いてたらヒメも同じリストを作って、「るりの御守り」って名前をつけたと教えてくれた。

 闘う人の力強さと、聖母みたいに包み込む優しさの、両方を表現出来る声を持った人。
 初めて聞いた時、どうしてか全然分からなかったけど、ぼろぼろ泣いた。
 ヒメの言う通り、本当に御守りみたいに、へこんだ時は助けてくれて、大変な時は励ましてくれて、良いことが有った時は喜んでくれてる様に聞こえる、大好きな声。

 最近は、大人になったら彼女の様な人になりたいな、と思ったりする。
 歌いたいとか、そういう意味じゃなく。
 私も、誰かを助けたり、励ましたり、一緒に喜んだり出来る様なお仕事に就けたら、素敵だなあ……。

 進路のこと、自分の進みたい道がちゃんと見つかって、お父さん達にはっきりと、伝えられますように。

 そんな事を祈りながら、目を閉じて御守りの歌声に包まれた私は、ゆっくりその曲の世界の底に沈んで行った。

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