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MILK&honey
第10章 彼氏が居るので、困ります。

   *

「お疲れでーす」

 仕事が終わって、着替えて。一秒でも早く帰ろうと用意をしつつスマホを見たら、着信のライトが点滅している……と思った瞬間、荷物を持って立ち上がり外に出ながら掛け直していた。

「るりちゃん、出れなくてごめん!」
「かーさん……」

 るりちゃんは、すぐに出た。すげー心細そうな声で。

「どうした?何か有ったの?」
「……男の人が、塾からずっと、付いて来て……」
「え?!」

 頭の中が真っ白になった。
 塾から、ずっと……男っ?!

「今どこっ!」

 るりちゃんは、学校と俺んちの間くらいの駅の名前を言った。

「そこに居て!迎えに行くから!」

 走った。
 走って危険じゃないとこは、全部走った。乗り換え案内の最速よりもかなり速く、瑠璃ちゃんの待つ駅に着いた。
 改札の出口を見回して、柱の陰にるりちゃんを見付けた。

「るっ……」


『名前呼ばないで下さい』

『……変な人に名前がバレたら困るからだよー。ねー?るり』

 名前を呼びかけて、以前ヒメちゃんに言われた事を危うく思い出した。
 名前はダメだ、違う事っ……!

「お待たせ!ごめんっ、遅くなって!」
「……か……っ……」

 か、の口の形のまま、眉を泣きそうに歪めてぱたぱた走ってぶつかって来たるりちゃんを、ぎゅっと抱きとめて、素早く周りに目を走らせた。
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